死後事務って何?

 超高齢社会と言われる今、一人暮らしの高齢者も多く、自身の死後のことを案じる相談も多くなっています。
 「死後事務」「死後事務委任契約」という言葉を知っていますか?

1 死後事務

 高齢になってくると、どうしても自分の死後について思いを馳せることが多くなってきます。特に、一人暮らしで、近くに頼れる人がいないという高齢者にとっては、万が一の時の不安は深刻です。
 そんなときの備えの一つが「死後事務委任契約」です。

2 死後事務委任契約の検討

 最初に、自身の希望をよく考えてみましょう。先祖代々のお墓があって、そこに自分も入りたい人もいれば、ほかにお墓を求めたい人もいます。最近は、海などへの散骨を希望する人もいます。

 葬儀についても、親しい人を呼んで葬式をしてほしい人もいれば、葬儀は不要で、納骨まで終わってから、親戚や知人に知らせてほしいという希望の人もいます。自分の希望をあらためて検討してみましょう。

 法定相続人との関係も重要です。死亡すると自動的に相続が開始し、あなたの財産は相続人のものになるのです。死後事務委任契約を締結しておくと、ほとんどの場合、相続人も拘束しますが、できれば、相続人も納得して協力してくれたほうがトラブルになりません。

3 死後事務委任契約の具体的内容

①葬送に関する事務
 葬儀の実行、納骨や埋葬、また、その後の供養などが考えられます。葬儀を行う方法、埋葬の方法などを決めておきます。
 また、お墓はあるもののお墓の承継者がいないために墓じまいを希望する人もいます。墓じまいについては、それぞれの墓地によって、行い方が異なってきますので、具体的に検討する必要があります。永代供養を行ってもらって、お墓の使用権はお寺に返還する、というやり方が多く見受けられます。その費用も、決まりがあるところもあれば、住職との話し合いで決まるところもあり、様々です。

②死亡届
 葬儀を行う前提としても、自治体に死亡届を提出することが必要です。しかし、死亡届は、誰でもできるわけではなく、届出人が法律で決められています。親族や同居人であれば、届出人になれますが、死後事務を依頼されただけの人は、死亡届を出すことができません。他の親族や同居人、または家主や地主さんなど、届出人がいるかどうかも考える必要があります。
 死亡届を届出る親族や同居人がいないようであれば、任意後見契約を締結しておくことも考えられます。任意後見契約とは、自身の判断能力に困難が生じた場合に備えて、将来の自分の後見人を決めておく制度です。今後、もしも認知症などで、自身の判断能力に困難が生じても、自分が決めた任意後見人が代理人として活動し、あなたの人生を支えてくれます。また、任意後見人になる予定の人(任意後見受任者と言います)も、死亡届を出すことができます。

③その他の事務
 一人の人が亡くなった後の手続きはその他にも諸々あります。現状では、病院で亡くなる方が多いので最後の入院費の支払い、年金の死亡届と未支給年金の清算、高額療養費など役所からの給付金の清算、遺留品の処分などです。

 かわいがっていたペット、SNSのアカウントやインターネットなどの個人情報の抹消処理や契約の解約なども、今後増えていくと思われます。ペットの引き取り手を探したり、SNSの解約方法を予め確認しておくなど、準備が大切です。

 こうした事務の中から、どれをどのようなやり方で依頼するのかを決めて、死後事務委任契約を締結しておくと安心です。

4費用について

 死後事務委任契約の費用は、受任者(死後事務を執行してくれる人)に支払う報酬と、死後事務自体に必要な費用が考えられます。

 例えば、葬儀や墓じまいを行う場合、その費用が必要です。費用の金額は、葬儀の内容などによって違ってきます。前もってよく調べておくことが大切です。
 受任者は、葬儀業者やお寺さんなどと協議をし、あなたの希望をかなえるべく活動します。その報酬をどうするかについては、受任者とよく話し合って決めておきます。
 それらの費用、報酬などについては、予め受任者に預けておくことが一般的です。

5 報告

 最後に、受任者が死後事務を執行した後、その結果を報告する人や、預り金についても残金があれば、それを渡す人についても、決めておくことが適切です。人生の最後の時も、自分で決めておくことで安心を得る、そんな契約にすることが一番大切です。