成年後見制度は、認知症、知的障害、精神障害、高次脳機能障害などの精神上の理由により、課題や困難を抱える方を支援する制度です。今年(2026年)6月に現行制度を抜本的に見直す改正法が成立しました。2028年頃に新制度がスタートします。
1 なぜ改正されたの?
現行の成年後見制度は、2000年4月から始まっていますが、それから四半世紀以上が経過し、いくつかの大きな課題、利用者からの不満や不安が指摘されていました。
代表的なものは以下の点です。
(1)終わらない:一度利用を始めると終了せず、事実上終身制となっている。
(2)広すぎる:後見人の権限が広く、本人の自由な自己決定が必要以上に制限されてしまう。
(3)制約される:後見人等が本人の意思を十分に確認せず、決めてしまうことで本人の自己決定が制限されることがある。
(4)代わらない:本人のニーズが変わったり、後見人と相性が合わなかったりしても、途中で後見人等を交代しにくい。

さらに、国連の障害者権利委員会からも、日本に対して、本人の意思決定を代行する制度である成年後見制度を廃止し、本人の意思決定を「支援」する制度を中心とすべき旨の勧告が出されていました。
こうした状況を踏まえ、改正の方向が議論され、抜本的な改正を含む民法改正法が今年(2026年)6月に成立しました。
2 法定後見制度の主な改正点
これまでの「後見」「保佐」「補助」という3つの類型を廃止し、すべて「補助」に一元化されます。

①必要な権限を個別に選ぶ
本人の生活状況や困りごとに合わせて、必要な代理権や同意権(取消権)を個別に選びます。「福祉サービス契約」「遺産分割」など、必要性のある権限を選んで付与されます。

②本人の意向をより尊重する制度へ
制度の利用開始、代理権や同意権(取消権)の付与にあたっては、原則として本人の請求又は同意が必要となります(本人が同意できない場合は別)。
また、補助人は、本人に情報提供を行い、本人の好みや希望を含めた「意向」を把握する義務があること、それを尊重して職務を行うべきことが明確に義務付けられました。
③「終わることができる」制度へ
「一度始めたら一生続く」制度から、必要性が消滅すれば終了できることとなりました。本人の判断能力が回復した場合だけでなく、「遺産分割の手続きが無事に終わった」「施設に入所して消費者被害に遭うリスクがなくなった」「保険金請求の手続が完了して、保険金を受領できた」など、制度を必要とした具体的な理由、必要性が解消された場合は、途中で利用を終了することができるようになります。
ただ、預貯金管理や入居施設との契約などの継続的な課題がある場合、終了後の本人の生活や財産管理に課題が残らないか、本人保護に欠けることがないかについては、検討が必要です。
福祉分野での新しい補助制度に代わるべき新たな受け皿も検討され、社会福祉法等の改正も行われました。今般の成年後見制度の改正は司法と福祉の一体的改革と言われていますので、それぞれの地域での地域福祉の在り方、福祉サービスの状況にも注目しましょう。
④柔軟に補助人を交代できる
今までは、横領などの明らかな不正行為がなければ後見人の解任は困難であり、後見人の自主的な辞任を待つ必要があり後見人の交代がなされづらいという問題がありました。新制度では、「本人の利益のために特に必要がある場合」には、家庭裁判所が補助人を解任できることとなりました(但し欠格事由にはならない)。
⑤特定補助人について
包括的に取消権が付与される「特定補助人」を付する審判も新設されています。これは「事理弁識能力を欠く常況にある者」につき、必要とされる取消権の対象である行為を特定できず、預金取引や贈与契約、重要な財産に関する契約など、包括的に取消権を付与する必要性がある者について、特定補助人を付するとするものです。

個別の取消権では足りず、包括的な取消権付与の必要性が必要です。また、代理権付与は別であり、例えば預金取引の代理権付与については、その必要性がある場合に、別途、代理権付与の審判申立てが必要です。

このように特定補助人は、現行の成年後見人とは全く異なります。また、限定的、厳格な運用が期待され、原則として鑑定手続き(または少なくとも医師二人の診断)が必要とされています。
⑥成年後見と保佐は廃止
改正法が施行されると成年後見と保佐は廃止されます。ただ、現在から施行までに開始した成年後見と保佐は、そのまま続くこととされています。その場合、成年後見人・保佐人は、①そのまま旧法適用のまま、②新制度に移行して新制度の補助人となる、あるいは③制度利用の必要性が消滅していれば、制度利用を終了する、の3つの選択肢があることとなります。
3 任意後見制度の改正点
元気なうちに自身の将来の支援者を自分で選んでおく任意後見についても、改正が行われました。

(1)任意後見監督人が必須ではなくなりました。
これまでは、任意後見契約を発効させるためには「任意後見監督人」というチェック役を必ず選任する必要がありましたが、明らかに任意後見監督人による監督の必要性がないと認められるときは、任意後見監督人の選任を不要にすることができるようになります。その場合は、家庭裁判所が直接監督することとなります。

(2)法定後見との併存が認められます。
これまでは、法定後見と任意後見は、原則として任意後見が優先し、どちらかの利用しかできないとされてきました。しかし、改正後は、新制度の「補助」と任意後見を重ねて併存利用することが可能になりました。任意後見人の代理権が不足していた、などの場合、その権限だけ新制度の補助人に付与して困りごとを解決する、ということもできるようになります。
(3)受任者に順位をつけられるようになりました。
複数の人と任意後見契約を締結し、それぞれの受任者の順位を定めておきたいとの希望がかなえられます。Aさんに任意後見人になってほしいけど、Aさんが任意後見人になれない場合はBさんに頼みたい、という場合、Bさんのことを「予備的受任者」と言います。これまでは、Bさんに自発的に遠慮してもらうしかなかったのですが、Bさんとの任意後見契約の中に「Aさんが受任できない場合だけ契約を発効させる、そうでなければ任意後見を開始しない」という「不開始の合意」を規定しておくことができるようになりました。
その他にも、任意後見監督人選任につき、本人の意向を尊重することが明記されるなど、より本人の希望に寄り添った選択ができるようになります。
4 おわりに
今回の法改正には、本人の意思、意向を優先し、「地域みんなで本人を支えていこう」、つまり地域共生社会を目指そうというメッセージが込められています。
「終わることができる」こととなる成年後見制度ですが、制度が終わったとしても本人は、何らかの支援が必要な人であることに変わりはありません。社会と地域に支援の仕組みが整わなければ終わることができないのです。

障がいの有無にかかわらず、地域で自分らしく暮らしていくためには何が必要なのか、地域共生社会とはどういう社会なのか、私たち一人一人が支え合うとはどういうことなのか、あらためて皆で考えていくことが大切です。






























































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