成年後見制度が大きく変わります

 成年後見制度は、認知症、知的障害、精神障害、高次脳機能障害などの精神上の理由により、課題や困難を抱える方を支援する制度です。今年(2026年)6月に現行制度を抜本的に見直す改正法が成立しました。2028年頃に新制度がスタートします。

1 なぜ改正されたの?

 現行の成年後見制度は、2000年4月から始まっていますが、それから四半世紀以上が経過し、いくつかの大きな課題、利用者からの不満や不安が指摘されていました。
 代表的なものは以下の点です。
(1)終わらない:一度利用を始めると終了せず、事実上終身制となっている。 
(2)広すぎる:後見人の権限が広く、本人の自由な自己決定が必要以上に制限されてしまう。
(3)制約される:後見人等が本人の意思を十分に確認せず、決めてしまうことで本人の自己決定が制限されることがある。
(4)代わらない:本人のニーズが変わったり、後見人と相性が合わなかったりしても、途中で後見人等を交代しにくい。

 さらに、国連の障害者権利委員会からも、日本に対して、本人の意思決定を代行する制度である成年後見制度を廃止し、本人の意思決定を「支援」する制度を中心とすべき旨の勧告が出されていました。
 こうした状況を踏まえ、改正の方向が議論され、抜本的な改正を含む民法改正法が今年(2026年)6月に成立しました。

2 法定後見制度の主な改正点

 これまでの「後見」「保佐」「補助」という3つの類型を廃止し、すべて「補助」に一元化されます。

①必要な権限を個別に選ぶ
 本人の生活状況や困りごとに合わせて、必要な代理権や同意権(取消権)を個別に選びます。「福祉サービス契約」「遺産分割」など、必要性のある権限を選んで付与されます。

②本人の意向をより尊重する制度へ
 制度の利用開始、代理権や同意権(取消権)の付与にあたっては、原則として本人の請求又は同意が必要となります(本人が同意できない場合は別)。
 また、補助人は、本人に情報提供を行い、本人の好みや希望を含めた「意向」を把握する義務があること、それを尊重して職務を行うべきことが明確に義務付けられました。
③「終わることができる」制度へ
 「一度始めたら一生続く」制度から、必要性が消滅すれば終了できることとなりました。本人の判断能力が回復した場合だけでなく、「遺産分割の手続きが無事に終わった」「施設に入所して消費者被害に遭うリスクがなくなった」「保険金請求の手続が完了して、保険金を受領できた」など、制度を必要とした具体的な理由、必要性が解消された場合は、途中で利用を終了することができるようになります。
 ただ、預貯金管理や入居施設との契約などの継続的な課題がある場合、終了後の本人の生活や財産管理に課題が残らないか、本人保護に欠けることがないかについては、検討が必要です。
 福祉分野での新しい補助制度に代わるべき新たな受け皿も検討され、社会福祉法等の改正も行われました。今般の成年後見制度の改正は司法と福祉の一体的改革と言われていますので、それぞれの地域での地域福祉の在り方、福祉サービスの状況にも注目しましょう。
④柔軟に補助人を交代できる
 今までは、横領などの明らかな不正行為がなければ後見人の解任は困難であり、後見人の自主的な辞任を待つ必要があり後見人の交代がなされづらいという問題がありました。新制度では、「本人の利益のために特に必要がある場合」には、家庭裁判所が補助人を解任できることとなりました(但し欠格事由にはならない)。
⑤特定補助人について
 包括的に取消権が付与される「特定補助人」を付する審判も新設されています。これは「事理弁識能力を欠く常況にある者」につき、必要とされる取消権の対象である行為を特定できず、預金取引や贈与契約、重要な財産に関する契約など、包括的に取消権を付与する必要性がある者について、特定補助人を付するとするものです。

 個別の取消権では足りず、包括的な取消権付与の必要性が必要です。また、代理権付与は別であり、例えば預金取引の代理権付与については、その必要性がある場合に、別途、代理権付与の審判申立てが必要です。

 このように特定補助人は、現行の成年後見人とは全く異なります。また、限定的、厳格な運用が期待され、原則として鑑定手続き(または少なくとも医師二人の診断)が必要とされています。 
⑥成年後見と保佐は廃止 
 改正法が施行されると成年後見と保佐は廃止されます。ただ、現在から施行までに開始した成年後見と保佐は、そのまま続くこととされています。その場合、成年後見人・保佐人は、①そのまま旧法適用のまま、②新制度に移行して新制度の補助人となる、あるいは③制度利用の必要性が消滅していれば、制度利用を終了する、の3つの選択肢があることとなります。

3 任意後見制度の改正点

 元気なうちに自身の将来の支援者を自分で選んでおく任意後見についても、改正が行われました。

(1)任意後見監督人が必須ではなくなりました。
 これまでは、任意後見契約を発効させるためには「任意後見監督人」というチェック役を必ず選任する必要がありましたが、明らかに任意後見監督人による監督の必要性がないと認められるときは、任意後見監督人の選任を不要にすることができるようになります。その場合は、家庭裁判所が直接監督することとなります。

(2)法定後見との併存が認められます。
 これまでは、法定後見と任意後見は、原則として任意後見が優先し、どちらかの利用しかできないとされてきました。しかし、改正後は、新制度の「補助」と任意後見を重ねて併存利用することが可能になりました。任意後見人の代理権が不足していた、などの場合、その権限だけ新制度の補助人に付与して困りごとを解決する、ということもできるようになります。

(3)受任者に順位をつけられるようになりました。
 複数の人と任意後見契約を締結し、それぞれの受任者の順位を定めておきたいとの希望がかなえられます。Aさんに任意後見人になってほしいけど、Aさんが任意後見人になれない場合はBさんに頼みたい、という場合、Bさんのことを「予備的受任者」と言います。これまでは、Bさんに自発的に遠慮してもらうしかなかったのですが、Bさんとの任意後見契約の中に「Aさんが受任できない場合だけ契約を発効させる、そうでなければ任意後見を開始しない」という「不開始の合意」を規定しておくことができるようになりました。
 その他にも、任意後見監督人選任につき、本人の意向を尊重することが明記されるなど、より本人の希望に寄り添った選択ができるようになります。

4 おわりに

 今回の法改正には、本人の意思、意向を優先し、「地域みんなで本人を支えていこう」、つまり地域共生社会を目指そうというメッセージが込められています。
 「終わることができる」こととなる成年後見制度ですが、制度が終わったとしても本人は、何らかの支援が必要な人であることに変わりはありません。社会と地域に支援の仕組みが整わなければ終わることができないのです。

   

 障がいの有無にかかわらず、地域で自分らしく暮らしていくためには何が必要なのか、地域共生社会とはどういう社会なのか、私たち一人一人が支え合うとはどういうことなのか、あらためて皆で考えていくことが大切です。



暑中お見舞い申し上げます


 世を挙げてAIブームです。
 確かに、AIに聞くと、回答の速さ、情報量の多さは圧倒的ですね。何を聞いても、世界中の知識を調べて教えてくれる、という感じがします。
 法律の世界でも、自分で図書館に行って、あちらの書籍、こちらの判例と調べ回らなくても回答を出してくれるAIが出回っています。利用すると便利です。なかなか利用前には戻れない、というのが実感ではあります。

 でも、AIが答えた文書だけでなく、出典の書籍や判例を、直接自分で読んでみると、「何だかちょっと違うなあ」と感じることも少なくありません。事案の微妙な違い、書いた人の重点の置き方など、さらに考えさせられることが多いように思います。
 AIに全面的に頼ってしまうのはやはり危うい、上手にまとめられたものだけを見ていてはたどり着けないものがあると感じます。
 便利に使いつつ、自分で原典にあたり、あらためて確認し、考えることを忘れないようにしたいと思います。
 暑い夏はこれからが本番です。皆様も、お元気にお過ごしください。

*私は8月10日(月)から17日(月)まで夏休みです。

2026年 盛夏
弁護士  土 肥 尚 子


暑い日が続き、毎日汗だくで、通勤、外出しています。
みなさま、お元気でお過ごしでしょうか?

 先月は、愛知の知多半島に旅行に行き、ひまわり畑を見学してきました。

 ひまわりが元気いっぱいに太陽に向かって咲いており、4歳の子どもが自分の身長よりも高いひまわりを見上げて「大きいね~」と声を上げていました。途中でひまわり畑の中に入り、見えなくなってしまったときは焦りました。。小さな子どもが、ひまわり畑でかくれんぼしたら、親は見つけられませんね。

 子どもに「ひまわりがおひさまの方を向いて咲いているね~」というと、「なんでだろうね~」と質問されました。答えられずあとで調べてみると、太陽の光が当たっていない側の茎で成長ホルモンが多く集まるため、日陰の側の茎が伸びて太陽の方を向いて倒れるということなのだそうです。4歳のなぜなぜ期のおかげで、私も博学になれるかもしれません。
 夏の暑さがこれからますます厳しくなると思いますが、みなさま、熱中症にはくれぐれも気を付けてお過ごしください。

2026年 盛夏
弁護士  川 戸 万 葉





今年もあっという間に年の瀬となりました。 皆様、お変わりなくお過ごしでしょうか。

 今年は、夏の酷暑の後、秋がほとんどなく冬になってしまいました。

 春夏秋冬の四季があるのが日本だったはずなのに、夏と冬しかないようで、寂しいですね。

 それと熊の被害には驚かされました。今年の漢字は「熊」とのこと。駅の近くの繁華街、学校の近く、さらに、自宅の戸を開けたら熊がいた、散歩していたら熊がいた、そんなニュースが続き、驚いてばかりです。

 東京のお隣の千葉県は本州で唯一、野生の熊がいないのだそうです。過去に生息していた記録も化石も見つかっていないとのことです。地形などが影響しているそうですが、何だか不思議ですね。

 熊の食べ物のどんぐりなどが不作のため、人里に下りてきていると聞くと、熊も受難のようです。お互いの距離を保って共生できるようになるといいですね。

 来年は、誰にとっても、熊にとっても、いい年になるよう祈りたいと思います。
 皆様も、良い年をお迎えください。

2025年12月
弁護士 土 肥  尚 子

*事務所は12月27日から1月7日までお休みです。




今年も一年があっという間に終わりました。
みなさまいかがお過ごしでしょうか?

私は5月に第二子を出産し、8月に保育園にも入園でき、業務に復帰しました。

 上の子の保育園の申込をしたのは3年前になりますが、その頃は年度途中に認可保育園に入園させられるなどというのは夢のまた夢という感じでしたので、空き状況も変化しているように思います。

 0歳の子どもは意外と元気で、まだ熱も出ておらず、毎日保育園に行ってくれているのですが、私は時々体調を崩してしまい、風邪を引くとなかなか咳が止まりません。

 とにかく、健康第一で過ごしていきたいと思います。

2025年12月
弁護士 川 戸  万 葉








親権、養育費の新しい制度について

 親権、養育費の新しい制度について

 令和6年5月に、父母が離婚した後もこどもの利益を確保することを目的として、民法が改正され、こどもを養育する親の責務の明確化とともに、親権、養育費、面会交流などに関するルールの見直しを行われました。

 そして、令和8年4月1日より、改正法が施行されることが決まり、離婚後の共同親権や、養育費の未払いに対応するため、法定養育費の制度や養育費請求権の先取特権が付与されることになりました。

2 共同親権について

 今までは、離婚するときに、父か母のいずれかを親権者に定めてしていましたが(単独親権)、令和8年4月1日からは、単独親権か、あるいは、親権者を父母双方と定める(共同親権)こともできるようになります。

 共同親権となった場合でも、食事や服装の決定、短期間の観光目的での旅行、心身に重大な影響を与えない医療行為の決定、通常のワクチンの接種、習い事、高校生の放課後のアルバイトの許可などの日常の行為については、単独で親権の行使が可能ですが、こどもの転居、進路に影響する進学先の決定、心身に重大な影響を与える医療行為の決定、預金口座の開設などは、父母が協議して共同して決めなければならないということになります。

 ただし、父母の協議や家庭裁判所の手続を経ていては親権の行使が間に合わず、こどもの利益を害するおそれがある場合は、父母の一方が単独で親権を行うことができるとされています。例えば、DVや虐待からの避難をする必要がある場合、こどもに緊急の医療行為を受けさせる必要がある場合、入学試験の結果発表後に入学手続の期限が迫っているような場合がそれにあたります。

 父母が共同して親権を行うべき特定の事項について、父母間で意見の対立がある場合は家庭裁判所に、親権行使者を指定するよう求めることができます。

 しかし、親権行使者の指定の手続については、どの程度の頻度で裁判所の期日が開かれることになるのか分かりませんが、従前の家事調停では1か月~1か月半に1回程度の頻度で調停期日が開催されていたということを考えると、家庭裁判所に、丁寧かつスピーディな判断を求めることは難しいように思います。

3 法定養育費について

 これまでは、父母の協議や家庭裁判所の手続により養育費の額を取り決めなければ、養育費を請求することができませんでしたが、今回の改正により、養育費の取決めをしていなくても、子1人つき2万円の法定養育費を請求することができるようになります。これは、あくまでも養育費の取決めをするまでの暫定的・補充的なものですので、父母が養育費の取決めをすれば、法定養育費は終了します。

 また、法定養育費の規定は、改正法施行後に離婚したケースのみに適用されるため、改正法施行前に離婚した場合は、法定養育費は発生しません。

4 養育費請求権の先取特権について

 これまでは、養育費の支払を取決めしていたとしても、別居親が養育費の支払を怠ったときに別居親の財産を差し押さえるためには、公正証書や調停調書、審判などの「債務名義」が必要でした。

 今回の改正により、養育費債権に先取特権という優先権が付与されるため、債務名義がなくても、子1人につき8万円までは、養育費の取決めの際に父母間で作成した文書に基づいて、差押えの手続を申し立てることができるようになります。

 注意していただきたいのは、先取特権に基づいて財産の差し押さえをするためには、公正証書、調停調書は必要ありませんが、合意書など父母間で作成した養育費に関する取決めの文書は必要であるということです。

 また、子1人つき8万円を超える養育費の取決めを行う場合には、公正証書等の債務名義を取得しておかなければ、別居親が養育費の支払いを行った時に財産の差し押さえを行うことができないということです。

5 以上のとおり離婚後の子の養育に関する新しい制度ができました。

 これから離婚を考えている方は、新しい制度も踏まえた離婚協議や調停手続等を行うことをお勧めします。分からないこと、不安なことがありましたら、どうぞご相談ください。




暑中お見舞い申し上げます

 今年も夏がやってきました。皆様お元気でお過ごしでしょうか?
 健康のためには体を動かすのがいいと言われます。皆様もそれぞれ、気を付けておられることと思います。

 私は、YouTubeを見ながらのヨガと、時々山に登っています。

 今年の春に、金時山に初めて登りました。割と低い山と聞いていたのですが、やっぱり登りはきついし、最後に階段があって、頂上にやっとの思いでたどり着きました。

 金太郎ゆかりの山で、頂上にはまさかりが飾られ、食堂には「まさカリーうどん」というのがありました。それを食べて英気を養い、降りてきました。
 天気がすごく良くて、富士山がくっきりはっきり見えました。おいしい空気とおいしいカリーと富士山で、元気百倍です。
 少し、日常を離れて体を動かすと幸せな気分になれるものですね。
 休みながら、元気に仕事をしていこうと思います。


2025年 盛 夏
弁護士 土  肥  尚  子


*私は8月13日(水)から19日(火)まで夏休みです。




 今年はあっという間に梅雨があけ、暑い日が続いていますが、みなさまいかがお過ごしでしょうか?

私は5月に第二子を出産しました。妊娠中は前回の反省を踏まえて、極力安静に努めましたが、結局、切迫早産になるなど、順調な妊娠生活とは言えませんでしたが、無事に出産し、母子ともに健康です!

 生後1か月半くらいになってしまいましたが、お宮参りにも行ってきました。御祈祷していただき、子どもが健やかに成長できそうな御利益を感じましたが、部屋が寒かったからか、私はその後体調を崩してしまいました。そもそも、出産後1か月程度でお宮参りって大変ですよね、、、もう少し後でもよくないでしょうか?と思います。

 8月以降は保育園に入園予定で、早期の業務復帰を目論んでおります。しかし、当面は、感染症の洗礼を受け、お休みになる日もありそうですね。
 とにかく、健康第一で過ごしていきたいと思います。

2025年 盛 夏
弁護士 川  戸  万  葉





遺言のデジタル化が進んでいます

 遺言のデジタル化が進んでいます。
 超高齢社会の日本において、遺言に興味を持つ方も増えています。
 今回の法律通信は「遺言のデジタル化」についてです。
 世の中全般、デジタル技術の活用が進んでいます。距離の離れた人とでも、オンラインで顔を見ながら話すことも簡単になりました。買い物でもネットショッピング、キャッシュレス決済が進んでいます。

 遺言についても、デジタル方式が検討され、実現されようとしています。

 遺言は、その人の最終意思を込め、その人の死後に意向を伝える大事な文書です。そこから、その人の真意を誤りなく伝え、勝手に書き換えられたりしないようにする必要があります。また、残された人の権利に大きな影響を与えるところから、慎重に熟慮を促す必要があるとも考えられています。そうした配慮から、民法では遺言の作成にあたって厳格な方式が定められています。
 遺言にデジタル技術をどのように活用していくのか、公正証書遺言と自筆証書遺言について見てみましょう。

1 公正証書遺言のデジタル化

(1)公正証書遺言の作成

 公正証書遺言は、公証役場で公証人に、公正証書を作成してもらう遺言です。
 公証人が遺言者の遺言能力を確認し、さらに遺言内容についても遺言者の意向を確認して作成します。これにより、遺言が無効となるリスクが大幅に減りますし、遺言が廃棄されたり、隠されてしまったりするリスクもなくなります。
 実際に後日、相続人等が遺言の無効を争うことも少なく、信用性が高い方式です。
 作成に際しては、現在は、公証人の面前で、遺言者から直接、遺言の内容を伝える必要があります。そのため、公正証書遺言を作成する場合には、公証役場に出向くか、公証人に出張してもらい、公証人と直接対面することが必要です。また、公正証書は書面(つまり紙)で作成され、原本はそのまま公証役場に保存されることとなっています。

(2)デジタル化の内容

 公正証書のデジタル化は、実はすでに法律改正はなされていて、本年(2025年)10月1日に、施行されることが決まりました。遺言だけでなく、公正証書すべてにおいて、オンラインによる作成ができるようになります。
 施行されると、オンラインで必要書類を提出し、ウエブ会議システムを通じて公証人とやり取りをし、署名・押印に代えて電子署名をして作成します。つまり、完全オンラインで公正証書遺言を作成することができるようになるのです。
 遺言について、証人2名が必要であること、遺言者が公証人に遺言内容を口頭で伝える(口授)ことなどはそのままです。それらをオンライン、ウエブ会議の方式でできるようになります。

 ただ、オンラインによる作成については、遺言者が希望した場合であることと、公証人が「相当と認めるとき」という要件があります。
 公証人として、希望があった全ての場合にオンライン作成を認めるということではありません。特に遺言の場合は、遺言者の真の意向・希望を確認する必要があります。遺言者以外の人の意向に影響されてしまい、遺言内容が曲げられてしまうことなどは防ぐ必要があります。遺言者自身にとっても、よく検討の上、熟慮して作成されるものであることも大事です。
 こうした要請から、遺言者の心身の状況などで、公職役場に出向くのが難しいなど必要性が高い場合、それとともに、遺言の利害関係者の関与を防げる場所が確保されているかなどの事情を含めて、相当性を公証人が慎重に判断することとされています。その上で公証人が相当と認めた場合に、オンラインによる作成が可能となります。
 なお、オンライン手続きで作成されていない公正証書遺言についても、原本は、原則として電子データで作成・保存されることとなります。但し、書面(紙)による証明書を希望すれば紙で提供されます。

2 自筆証書遺言のデジタル化

(1)検討されている内容

 自筆証書遺言は、その名のとおり、遺言者自身が自筆で書く遺言書です。以前は全文を、自筆で書くことが必要とされていましたが、2019年(平成31年)1月13日からは、財産の目録については自筆で書かなくてもいいことになっています(但し、目録に頁ごとに署名捺印が必要)。

 自分で思いを書いて作成できる自筆証書遺言は、作成に費用もかからず利用しやすいというメリットがあります。しかし、原則として全文を自書するという方法が時代に合わない、また自書に負担を感じる人も多いとして、デジタル化の検討が始まっています。
 こちらは、まだ検討段階ですが、例えば、証人2名の立ち合いの下、パソコンで遺言の全文と日付、証人の名前などを記載した文書を作成し、その経過を録音・録画して、遺言者が自分が作成した遺言であることを口述する、遺言には遺言者と証人が電子署名をする、などの方式が検討されています。この場合、現在の自筆証書遺言と同様、遺言者の死後、家庭裁判所による検認という手続きが必要とされる予定です。

 または、自身でパソコン等で作成した遺言を公的機関で保管するという方式も検討されています。現在、法務局で自筆証書遺言を保管する制度がありますが、自筆の遺言ではなく、パソコンなどで作成した遺言の電磁的記録を公的機関が預かる制度を検討中です。預ける手続きもオンラインで可能とすることが検討されています。

(2)注意点

 デジタル化は、便利な反面、本当に遺言者の真意で作成されているのか、他者が不当な影響力を行使したり、改変してしまうことがないのか、などを検討することが必要です。
 遺言の保管制度は、紛失や他者による改変を防止するものとして有用ですが、具体的な制度の在り方について、様々な議論が進んでいます。全体として、デジタル化は時代の趨勢でもあり、その方向で進んでいくものと思われます。
 全文を自分で書く自筆証書遺言もなくなることはありませんが、押印をどうするか、などが議論されています。
 今後も改正の方向性に注目しましょう。

今年も残り少なくなりました。

皆様、お変わりなくお過ごしでしょうか。

 今年も夏は酷暑、その後も秋とは思えない暖かい日が多く、紅葉の見頃も遅れていましたね。その後、季節外れの暖かさと言われる日があったかと思うと、その後に急に気温が下がったり、普通の気温の日があったりと寒暖差も激しかったように思います。

「寒暖差疲労」という言葉も聞きました。寒暖差に対応して身体機能を調節するのにエネルギーを使ってしまって、疲労やめまい、食欲不振などの症状が出ることがあるそうです。対応するには、軽い運動も効果的と聞き、何につけても運動は健康のために必要だと思います。少しずつでも運動を習慣にしようと思います。

 今年の冬は、平年並みか寒いそうです。ここ何年か暖冬と言われていたので、平年並みの寒い冬というのが実感できませんが、体調管理には気をつけようと思います。
 皆様も、健康に気を付けて、お過ごしください。

2024年12月

弁護士 土  肥  尚  子


*事務所は12月28日から1月7日までお休みです。




今年もあっという間に終わろうとしていますが、
皆様いかがお過ごしでしょうか?

 私は、寒くなってきたにも関わらず、油断をして薄着で過ごしていたところ、久しぶりに風邪をひいてしまいました。2歳になった子どもは、自宅で突然服を脱ぎだし、下着だけで過ごすこともありますが、元気いっぱい、風の子です。

今年は死後事務委任のご相談を何件かいただき、実際に事務を行いました。自分が亡くなった後に、葬儀や納骨をお願いしたい、墓じまいしたい、水道光熱費の支払いや解約の手続、施設の利用料や病院の医療費の支払いを行ってほしい、というようなご依頼です。

遺言とセットでご依頼いただくことも多いですが、特にだれかに遺産を遺したいという希望はないけれども、自分が亡くなった後に備えておきたい、というご希望で死後事務委任契約のみをご依頼いただくこともあります。
 死後に必要となる手続につき、ご不安がありましたら、どうぞご相談ください。
 皆様も、風邪などひかれないよう、暖かくお過ごしください。

2024年12月

弁護士 川 戸 万 葉


 

終活

~これからの人生を安心して過ごすために

1 終活って何をするの?

 終活が流行っています。人生の終わりを見据えて、今できる対策を考えようということです。一昔前までは、老後は子や親族がいることから考える必要がないものでした。
 しかし、現在は、無縁社会と言われ、また超高齢社会が進行しています。近くに頼れる親族がいない、あるいは親族には頼りたくないと言う人が年々増えています。
 他方、医療や福祉の現場では、その人本人の意思・意向・希望を大事にしようという方向が言われています。
 そこから、自分の老後を自身で思い描き、そのための準備をし、自分らしい人生を歩む準備をするのが終活だと言えます。

2 終活の手順

 終活は、自分の人生を準備するものです。まずは、自分自身が、どんな人生を送っていきたいかを考えることが大事です。
 このためには、エンディングノートと言われるものがいろいろと出回っています。自治体で配っているところもあるようです。これを活用して、記入をしながらいろいろと思いをめぐらすのもいい方法だと思います。
 また、一度、決めてもそれに固執しないことも大事です。自分も社会も、常に変化しています。今の状況に合わせて、また社会や周囲の状況にも合わせて、計画を変更していく柔軟性も大事です。
 そのためには情報収集も必要です。弁護士や各市区の社会福祉協議会、介護保険サービスを利用していればケアマネさんなどに相談してみると新しい情報が得られることもあります。

3 よく挙げられる課題

 高齢になると直面する悩みは、以下のものがよく聞かれます。
⑴ 足腰が弱って、買物や銀行からお金を下ろしてくるのが大変。
 高齢になると足腰が弱るのは誰にでも起こることです。自宅内に手すりをつけたり、外出する時の支援などは介護保険のサービスを利用することができます。 
 しかし、買物代行や銀行からのお金を下ろしてくるなど、お金を扱うことには利用できないのが一般的です。この場合、社会福祉協議会が行っている地域福祉権利擁護事業(全国的には日常生活自立支援事業)で預貯金の管理や払戻の援助などをしています。判断能力に課題があることが要件であり、事業のキャパシティーもありますが、利用できないか相談してみましょう。
 昨今は、スーパーやコンビニの配達サービスも充実していますので、そちらの利用も検討してみましょう。

⑵ 認知症になって自分の財産の管理ができなくなるかもしれない。
 日本の現在の高齢化率(65歳以上が全人口に占める割合)は29.3%、世界トップの超高齢社会です。今後もその高齢化率は増加し続けます。また、一人暮らしの高齢者も増加しています。
⑶ 入院や施設への入所の際に、身元保証人・身元引受人が求められる。
  病院の入院の際には、身元保証人がいないからと言って入院を断ってはいけない、との通知が出ていますので、治療の必要があるのに入院できないということはありません。
 有料老人ホームなどの施設入所に際しては、身元保証人・引受人が必要とされるのが一般的です。
⑷ 自分の葬儀や納骨は誰が行ってくれるのか、心配。
 死後事務と言われているものです。

4 備え

 このような課題に備える制度として、任意後見契約、財産管理契約、死後事務委任契約、遺言などがあります。

⑴ 任意後見制度、財産管理契約
 認知症などの判断能力の低下に備え、自分が信頼できる人(仮に「Aさん」とします)を予め自分の後見人として指定しておくのが任意後見契約です。判断能力が低下した後に家庭裁判所が任意後見監督人を選任し、その監督の下でAさんが任意後見人として仕事を始めます。任意後見監督人や家庭裁判所という公的な監督があるという安心感がある制度です。
 判断能力低下の前にもAさんの支援が受けられるように財産管理契約も同時に締結することが多いです。
 任意後見契約と財産管理契約を締結していると、Aさんを施設入所の際の身元引受人として、施設入所が可能となる場合がほとんどです。但し、Aさんは親族ではないため、債務の保証はできません。
 Aさんとの財産管理契約の内容にもよりますが、日常的な金銭管理や買物等につき支援を受けることも可能です。どのような支援が必要か、可能か、Aさんとよく相談しましょう。
(2) 死後事務委任契約
 自身の葬儀や納骨(死後事務と言われています)について不安がある場合、死後事務を任せる内容の死後事務委任契約を締結する人も増えています。
 前記の任意後見契約と財産管理契約を締結している信頼できるAさんと死後事務委任契約も締結し、葬儀や納骨を依頼するという場合も多いです。
 葬儀についての希望も、きちんと伝えておきましょう。死亡の際に連絡してほしい人は名簿にして渡しておきましょう。葬儀のやり方や納骨の場所などについてもきちんと伝えておけば希望通りになります。
 葬儀等にかかる費用については、大まかな金額を預けておくことも必要となります。
(3) 遺言
 遺言によって自分の財産の死後の行方を決めておくことが出来ます。法定相続人がいない場合、遺言が無ければ遺産は国庫に納められます。お世話になった人や団体に寄付したいなどの希望があれば、遺言を書いておくことで実現できます。
 また、遺言執行者を決めておくとその人が遺言を責任もって実現してくれます。前記のAさんを遺言執行者とし、生前からの財産管理、死後事務を依頼し、最後に遺言執行者として遺産を希望通りに寄付等してもらう、ということも出来ます。
 自身の希望をよく伝えておいて、老後から死後まで、サポートする体制を作っておくと安心です。

5 高齢者等終身サポート事業

 高齢者の悩みに対応して、身元保証や死後事務、日常生活支援等のサービスを行うのは、弁護士等の専門職も行っていますが、それ以外の事業者も増えてきています。
 これらの事業者の中には、料金体系が明確ではなく、高額な前払い金や預け金を要求したり、業者への寄付や遺贈が必須となっているなどの問題がある場合があります。国民生活センターにも苦情や相談が寄せられています。
 このため、これらの事業を「高齢者等終身サポート事業」として、国が2024年6月11日にガイドラインを発表しています。ただ、ガイドラインですので、違反しても罰則はなく、特定の監督官庁もありません。優良な事業者を認定するような制度もありません。今後、国による更なる施策が期待されます。

6 終わりに  

 超高齢社会、かつ、誰でも認知症になり得る社会で、誰もが安心して自分の人生を全うできるよう、制度をよく知って、上手に利用しましょう。

暑中お見舞い 申し上げます

 今年も猛暑となりましたが、皆様、お変わりなくお過ごしでしょうか?

 世の中全体、IT化、デジタル化が進んでいますが、裁判も急速にIT化が進んでいます。
 以前は訴訟や調停の期日は、必ず、裁判所に足を運んでいたものですが、現在は、web期日ということで、事務所にいながらパソコンの画面で期日に参加できます。裁判所まで行かなくていいので、楽だし、行き帰りの時間も節約できます。ただ、やはり、裁判官も含めて、当事者同士が現実に顔を突き合わせて話をすることの意義もあるように思います。

 「事件は現場で起きている」という映画のセリフがありましたが、直接会って話す、問題になっている場所があればそこに行ってみる、そうするとそれまで理解していなかったことが理解できたり、新たな発見があったりします。
 楽な方に流されず、人や現場を大切に、今後も仕事をしていきたいと思います。

2024年 盛 夏
弁 護 士   土 肥  尚 子



 私は8月12日(月)から16日(金)まで、夏休みです。




暑中お見舞い申し上げます

 暑い日が続いておりますが、みなさま、いかがお過ごしでしょうか?
 私は、7月で子どもが2歳になり、子どもが体調を崩すことが少なくなってきたのに伴って、私の体調も安定しております。
 体が硬くなっていると感じることが多くなってきた今日この頃ですが、自分でストレッチをすると手加減してしまうため、ストレッチ専門店で柔軟をしてもらいました。

 何度かストレッチをしてもらった時に、トレーナーさんから、「川戸さんは筋肉が平均的な女性と比較しても少ないので、たんぱく質をとってください」とアドバイスをいただきました。柔軟をしても、筋肉量が少ないと、すぐに硬い状態に戻ってしまうのだそうです。
 妊娠中も、産婦人科医から、とにかくたんぱく質をとるようにと言われていましたが、期限があったから頑張れました・・・。無理です、という顔をしていたのでしょうか、トレーナーさんからは、いまはコンビニでたんぱく質が入っているお菓子や飲みものが買えるから! 頑張ってください! と明るく声掛けをしてもらいました。

 妊娠中も、産婦人科医から、とにかくたんぱく質をとるようにと言われていましたが、期限があったから頑張れました・・・。無理です、という顔をしていたのでしょうか、トレーナーさんからは、いまはコンビニでたんぱく質が入っているお菓子や飲みものが買えるから!頑張ってください!と明るく声掛けをしてもらいました。
 ポテトチップスは封印して、たんぱく質入りのチョコバーを食べるようにしたいと思います。

2024年 盛 夏
弁 護 士   川 戸  万 葉

 

 





旧優生保護法

1 旧優生保護法についての最高裁判所の判決

 先日(7月3日)、最高裁判所で、旧優生保護法のもとで不妊手術を強制された人たちが国を訴えた裁判で、国に賠償責任があるとする判断が確定したとして大きく報道されました。 
 この判決は、障害を持つ人に対して不妊手術を強制した旧優生保護法を違憲であると明確に判断した点で画期的な判決です。
 法律的には、最高裁判所での争点は、たった一つ、被害者の損害賠償請求権が、民法に定められていた期間(20年)を経過したことにより消滅しているかどうか、だけでした。旧優生保護法で、不妊手術を強制することが憲法13条(個人の尊重、幸福追求権)、14条1項(法の下の平等)などに違反し、その違反により被った損害賠償請求権を行使できるかどうか、が争点でした。
 国側は、「民法では、不法行為から20年を経過した場合には、請求権は消滅すると定めている」と主張しました。これは、20年という期間を「除斥期間」と捉え、その例外は一切認めない、という考えです。最高裁判所は、これまでそのように解釈してきていました。しかし、最高裁判所は、不妊手術の強制は憲法違反であるとし、除斥期間についても、「著しく正義・公平の理念に反する特段の事情がある場合」には、期間が経過しても権利は消滅しない、との初判断を示し、これまでの判例を変更したのです。

2 「除斥期間」とは?

 不法行為に基づく損害賠償請求権の時効について、本件で適用される民法の規定は、「損害および加害者を知った時から3年」と「不法行為の時から20年」という二つの規定がありました。本件では、不妊手術は、数十年前に行われたものであり、20年以上の期間が経過しています。最高裁判所はこの「不法行為の時から20年」という規定は「除斥期間」であり、20年を経過すると、一律に請求権は消滅してしまい例外は認められない、と解釈してきました。
 しかし、本件が、国による著しく正義・公平の理念に反する人権侵害であることから、そうした場合には、除斥期間の主張は、信義則違反又は権利濫用であると判例を変更して、国の上告を棄却しました。
 学者の間では、以前から、そもそも除斥期間ではなく時効の問題と解釈すべきと主張されていました。20年経過したら、一律に請求権が消滅するというのではなく、時効期間と考えるというものです。

3 現在の民法(2020年令和2年4月1日から施行)と除斥期間

 現在では、20年というのは除斥期間ではなく、時効期間であると明確に規定されました(現行民法724条)。
 除斥期間ではなく、時効期間であるとどこが違うかというと、一番の違いは除斥期間というのは、20年が経ってしまうと、請求権は自動的に消滅してしまう、ということです。
 時効であれば、完成猶予と更新という制度があります。例えば、裁判を提起して請求すると時効の完成が猶予され、裁判が終了すると、時効が更新されます。
 時効の完成猶予となるのは、裁判上の請求(訴えの提起)、強制執行・競売、仮差押え、裁判外の請求(催告)、協議を行う旨の合意、天災です。
 このうち、時効が更新されるのは、裁判上の請求(訴えの提起)、強制執行・競売だけです。それ以外の、例えば、裁判外の請求(催告 内容証明郵便による請求が典型例です)は、その後6ヵ月は時効の完成を妨げますが、その間に訴訟提起をしないと時効は更新されず、時効が完成してしまいます。

4 時効というのは、長期間続いた事実関係をそのまま認めようとする制度です。

 消滅時効については、「権利の上に眠る者」(権利があるのに長期間行使しない人)は保護しない、また、長期間が経過してしまうと証拠が散逸し、真実を発見することが困難になること、などがその趣旨とされています。
 一般的には、早期に検討し、解決に向けて行動するほうが解決可能性は高くなります。

 今回の旧優生保護法の人権侵害は、当事者に不妊手術であることを知らせないままに手術を受けさせた事例もあり、さらに障害者に対する根強い差別もあり、当事者が声を上げることが不可能であったとの事情を正面から受け止め、「著しく正義・公平の理念に反する特段の事情がある」として、国の上告を排斥しました。
 今後、国は、訴訟提起していない被害者も含め、全面救済をすることが求められています。今後の動向にも注目しましょう。