「法定相続情報証明制度」2017年冬号

 今年(平成29年)5月29日から、法務局による「法定相続情報証明制度」が始まりました。戸籍に基づき、法定相続人を証明してくれる制度です。

1 相続と戸籍

 超高齢社会の日本は、多死社会でもあります。
 近しい親族が亡くなると、悲しみに暮れる間もなく、相続が開始し、不動産や預貯金の相続手続きが必要となります。遺言が作成されていなければ、法定相続人が遺産を受け取ることになりますが、その相続手続きに必要なのが戸籍です。
 戸籍制度は、世界的にはない国の方が圧倒的に多いのですが、日本人は、戸籍により身分関係が公証されます。自分の戸籍謄本を見たことがありますか? 親の戸籍になると見たことがない、という人の方が多いかもしれませんね。どなたかが亡くなり死亡届を提出すると1、2週間で死亡の記載がある戸籍ができます。相続人であれば、相続手続きに必要との理由で、戸籍を取得することができます。

2 相続手続きに必要な戸籍

 相続手続きをする場合は、死亡の記載のある戸籍だけでは足りません。その人が生れた時から亡くなるまでの戸籍を全て揃える必要があります。
 人は、最初(生まれた時)は、親の戸籍に入りますが、結婚したとすれば、その時には新しい戸籍を作ることになっています。結婚しなくても20歳になると新しい戸籍を作ることもできます。分籍と言います。
 本籍を変更する(転籍)をすることも自由です。本籍は日本国内のどこにおいてもよく、実際に住んでいる場所とは関係ないのですが、仕事の関係などで、他の地方に転居した場合、住居のあるところに本籍を移す人も多いです。
 また、誰かの養子になれば、その養親の戸籍に入ります。
 こうした変動がありますので、一人の人の戸籍と言っても、何通にもなります。10通以上になる人も稀ではありません。そして、この何通もの戸籍すべてが、不動産の登記手続きにも、○○銀行の手続きにも、□□信用金庫の手続きにも、必要とされるのです。
 これまでは、相続手続きを行う際に、いちいちすべての戸籍謄本を持参し、確認してもらうことが必要でした。

3 法定相続情報証明制度

 ある人の生れたときから亡くなるまでの戸籍一式を、法務局が確認し、法定相続人を証明してくれる、というのが「法定相続情報 証明制度」です。A4の紙に一覧図の形で証明してくれます。手数料は無料です。この証明を一度取っておくと、その後の相続手続きは、その証明書一通を呈示するだけでできることとなり、手続きが大変スムーズになります。呈示を受ける金融機関等の方も、戸籍関係を確認する手間が省けることとなり、相続手続きも円滑に進むと思われます。
 但し、以下の点には注意が必要です。

①戸籍謄本等は、自分で取得することが必要です。亡くなられた方の出生から死亡までの戸籍を揃えるのは自ら行う必要があり、戸籍取得の費用は必要です。
②相続人の一覧図も自分で作成する必要があります。相続関係を表す図は作成して法務局に提出する必要があります。記入様式は法務局のホームページに掲載されていますので、それを使って作成することができます。
③相続放棄をした人や、協議の結果、遺産を取得しない人がいた場合でも、それは反映されません。あくまで、戸籍謄本等により法定相続人を証明するものですので、法定相続人全員を証明することとなります。

 相続手続きを少し簡単にすることができますので、使ってみてはいかがでしょうか?