「遺産分割・相続の考え方」2013年夏号

遺産分割・相続の考え方

 最近、遺言や相続の相談が多くなっています。「争続」などと言われ、遺産分割で何年も、もめてしまったという話もよく聞きます。そんなことにならないように、遺言が大事とも言われています。自分の財産を、最後にどうしたいのかを決める遺言は、人生の総決算として大事です。
 その前提として、遺言がない場合、相続はどうなるのかを知ることから始めましょう。

1 相続は人の死亡で始まります

 人の生死は予測ができません。誰も明日のことは分からない。突然の死亡で、悲しみにくれるとともに、相続が発生してしまいます。
 時々、親の相続の相談にいらした方の話をよく聞いてみると、まだ親御さんは健在でおられることがあります。
 相続に備えることは、ある程度はできますが、将来のことは不確定で、なかなか予測が難しいものです。例えば、相続 税も平成27年1月から上がると言われていますが、その後の改正もあり得ます。現状を前提に考えるしかないのですが、あまり現状を固定して考えるとかえって対応できないことになりかねません。

2 遺産を受け取る人は民法で決まっています

 亡くなった人のことを「被相続人」(ヒソウゾクニン)と言います。その人の財産が「遺産」となります。遺産を受け取る人は、相続人(ソウゾクニン)です。相続人になるのは、以下の人たちです。
(1)配偶者
 (亡くなった人の夫または妻)は必ず相続人になります。この配偶者は、戸籍上婚姻の届け出を出した人を言い、戸籍の届け出がない内縁関係の場合は、含まれません。たとえ、何十年も同居していて、親類もみんな配偶者と認めていても、戸籍上配偶者でなければ、相続権はありません。
(2)子ども
 被相続人の子どもは相続人になります。養子も含みます。被相続人が再婚していた場合、前婚の子どもも再婚した後の子どもも子どもであることに変わりありませんので、同じように相続人になります。
 再婚した相手の子ども(連れ子)は、被相続人と養子縁組をしていれば、養子として相続人になりますが、養子縁組をしていないと、法律上親子関係はありませんので、相続人ではありません。同居していたとしても同じです。
(3)親
 子どもがいない場合、被相続人の親が生きていれば、親が相続人になります。長寿社会の昨今、親より先に子どもが死亡する、というケースもそれほど珍しくはありません。
 また、病気や事故などで、若くして亡くなられる場合もあります。
 但し、亡くなった子どもに、子どもや 孫がいれば(被相続人からすると孫・ 曾孫)、孫・曾孫が子どもに代わって相続人になります。
(4)兄弟姉妹
 子どもも(孫・曾孫 も)、親もいない場合には、兄弟姉妹が相続人になります。
 例えば、子どもがいない夫婦の場合、夫が亡くなると、残された妻は夫の兄弟姉妹と共に、相続人となるのです。 「夫の兄弟は、遠く離れて住んでいるし、何年も連絡を取っていない」あるいは「夫は、全て私にくれると言っていた」という相談も多いのですが、遺言が無ければ、夫の兄弟姉妹との遺産分割協議が必要となります。
 なお、被相続人より先に亡くなった兄弟姉妹がいる場合、その人に子ども(被相続人からみると甥、姪)がいれば、その甥、姪が亡くなった兄弟姉妹の代わりに相続人となります。

3 戸籍を揃える

(1)相続人の範囲は、普通は戸籍を調査して決まります
 亡くなった方の戸籍謄本を取ると、配偶者がいるかどうかがわかります。夫婦は必ず同じ戸籍に入っているからです。それ以外の相続人の範囲は、上記のごとく、子ども、親、兄弟と広がっていきます。
 現在の戸籍から始め、その前の戸籍を次々と取っていって、被相続人の生 まれた時から亡くなるまでの戸籍を揃え、相続人を確定していきます。遺産分割をするには、このように戸籍をそろえることが必要です。遺産である預貯金を下すにも、不動産の登記名義を変えるにも、銀行でも登記所でも、戸籍一式を求められます。
(2)親子関係と戸籍
 以前、「母が亡くなったのだけれど、私の戸籍には母の名前が書かれていな い」という相談がありました。また、「父が認知してくれなかったので、父の名前が書かれていない」ということもあります。このように戸籍はすべて真実、というわけではありません。親子関係があるのに、戸籍に書かれていない、ということは実際にあります。
 但し、夫婦は、戸籍への届け出がないと内縁になってしまい、法律上の夫婦とはみなされません。親子関係については、それを証明して、戸籍を訂正することができます。DNA鑑定が発達した今では、100%に近い確率で親子関係を証明することができます。それにより戸籍を訂正して、遺産分割協議に参加することもできます。