「自己破産の申立」2013年冬号

1 はじめに

 新年を迎えるにあたり、「再スタートの制度」である自己破産の申立を取り上げてみたいと思います。 自己破産の制度は、借金を踏み倒すというようなマイナスのイメージを持たれる方もいらっしゃるかもしれませんが、この制度の目的は、「破産者の経済的再生」にあります。一言でいえば、再チャレンジ制度です。

2 借金をゼロにするためには免責の許可を受けることが必要です

 個人の場合、破産の申立を行うだけでは借金はなくなりません。破産申立と同時に「免責手続」の申立も一緒に行うことになります。免責の許可が出て初めて、借金がゼロになります。免責の許可が出ない場合もあります。たとえば、債務を抱えた原因が主に浪費や賭博という場合などが典型的ですが、免責されないのはよっぽどの場合だと考えてください。 ただし、免責された場合であっても、全ての債務がゼロになるわけではありませんので注意が必要です(下記3のデメリ ット②)。

3 自己破産のメリット・デメリット

 破産の申立を行うと、会社の人や友人たちに知られるのではと心配される方がいらっしゃいます。たしかに、個人の破産の場合だと、破産の手続開始と免責許可の際に官報に掲載されることになります。
 しかし、一般の人はあまり官報をチェックすることもないと思うので、周りの人たちに知られる可能性は低いと言えます。
 自己破産のメリット、デメリットはいろいろとありますが、大まかなものとしては次の通りです。
【メリット】 借金が免除されることただし、免除されないものもある。
【デメリット】
①破産手続が終わるまでは一定の職業、資格につけない(警備員、保険のセールス、取締役、後見人等)
②税金、養育費などは免除されない
③自己破産後7年間以内に再び自己破産するのは難しい
④官報に公告が掲載されるので、完全に秘密にはできない

4 個人破産の申立は、法テラスの民事法律扶助制度を利用できます

 個人破産手続の申立を弁護士に依頼すれば、裁判手続費用を抑えられる可能性が大きくなる(同時廃止事件といいます)、煩雑な書類作成が不要になる、弁護士から債務整理の通知を送れば取立がストップするなどのメリットがあります。ただし、気になるのは弁護士費用だと思います。
 弁護士費用については、資力基準を満たす必要はありますが、法テラスの民事法律扶助制度を利用することができ、法テラスが費用を立て替えてくれます(個人破産の場合は、資力基準を満たす場合がほとんどです)。一般的な弁護士報酬基準と比べると安く依頼することができ、また、毎月5000円程度で立替金の分割支払を行うことができます。

5 おわりに

 債務整理の方法としては、今回取り上げた破産手続の他にも、任意整理(話し合いによる方法)、民事再生手続(裁判手 続の一つで、一定の債務をカットして、 残りを分割で弁済していく方法)などがあります。
 もし、借金でお困りの方がいらっしゃれば、破産制度を含めて、法的整理を検討されてみてはいかがでしょうか。